カフェ等様々なところで場所にしばられずに仕事をすること、する人の事を、世間ではノマドワーキング、ノマドワーカーと呼ぶようになり、日本でも”ノマド”という言葉は定着し、みなさんなんとなく元来の意味も想像つくかもしれない。
ノマド=遊牧民、放浪者
ジェシカ・ブルーダーの ”ノマド: 漂流する高齢労働者たち”というノンフィクションをもとにしたのが 2020年最高傑作 「ノマドランド」。
ヴェネツィア国際映画祭、ゴールデングローブ賞、アカデミー賞 をはじめ、賞を総なめ。ファーンはネバダ州のエンパイアで臨時教員をやっていたが、工場の閉鎖で街の経済が大打撃を受け、そのあおりで彼女も家を手放す羽目になった。途方に暮れたファーンだったが、自家用車に最低限の家財道具を積み込み、日雇いの職を求めて全米各地を流浪する旅に出た。その過程で、ファーンは同じ境遇の人々と交流を深めていくのだった。本作はそんなファーンの姿を通して、「現代のノマド」の実像を描き出していく。
実は、この手の映画はあまり観ない。
淡々とすすむストーリーはちょっと苦手。
だけどこれだけ賞を総ナメとあっては、観ないわけにはいかない。
そしてはじまってすぐの広大な自然の中ドライブシーンに心を奪われてしまった。
Lisa JohnsonによるPixabayからの画像
劇的な何かがある映画ではなく、予想通り淡々とした映画だったけど、
静かに、心に、とん、とん、と、落ちてくる”何か”が、確かにあった。
放浪する人、定住する人
お金があるとかないとか
仕事があるとかないとか
自由だとか縛られているとか
逞しいとか弱いとか
夢があるとかないとか
勇気があるとか諦めとか
すべてが表裏一体だなって思った。
ヴァンで生活する彼女のこんなセリフがあった。
「ホームレスじゃなくてハウスレス、別物よ」
「No, I'm not homeless. I'm just .... houseless. Not the same thing, right?」
Rudy and Peter SkitteriansによるPixabayからの画像
日本語字幕よりも、英語の方が、すごくしっくりくる。
houselessの前の間に、彼女の認めてしまっては立ち行かない守らなければならない誇りのようなものが詰まっていた気がするの。でもこれは序盤のお話。
後半には、もうそういう言葉が必要ではなくなった様がにじみ出ていた気がする。
いつだったか、テレビで「アドレスホッパー」という生き方を紹介していた。
家を持たずに、シェアハウス、ホテル、ゲストハウス等々を、渡り歩く生活とのこと。
普通にサラリーマンをしている人でも、こういう暮らしをしている人もいるんだとか。
テレビで紹介されている内容からすると、”物”への執着でなく”事”に重きを置いた人たちが、各地、各所移動しながら、いろんな経験をしているようだった。
今はコロナをきっかけにテレワークという働き方も(前よりは)広がって、アドレスホッパーという生活スタイルも広がるのかもしれない。
だけどこれは・・・”楽しみたい”要素が強い。
キャンピングカーで全米を”旅する”人は”楽しみ”たいのだと思うけど、ノマドランドで描かれていた世界は、高齢者が多く、そういう生き方を選んだ人々もいれば、そういう生き方にならざるをえなかった人もいて・・・・”哀”が漂ってた。
生きるために移動を続ける人々 ノマド
普段自分では選ばないような映画だったけど、新鮮で良かった。